所属支部より『租税教室』についての原稿の依頼を頂き、会報へ寄稿いたしました。
租税教育を推進する者として、『租税教室』の現場はどのようなものなのか、どのように考えて講師活動を行っているのか。良い機会ですので寄稿した全文を以下に掲載いたします。
なお、支部の会員向けに書いたものでございますので、一部表現を伏せた形での掲載となりますことご了承ください。
『租税教室』の活動について
今回は、租税教育推進部の『租税教室』の活動についてご紹介いたします。
皆さま、そもそも『租税教室』と聞いて、どのような内容を行っているか具体的にイメージが湧きますでしょうか?
そこでまずは、『租税教室』の内容のご紹介から始まり、私自身が講師として感じているところを述べて終わりたいと思います。なお、当支部では、日税連の標準テキストによらず、支部独自の内容にて、講師1名でパワーポイントを使用して授業を行っております。
『租税教室』は、「税金について、ただ教える」というものではありません。「社会があって、そこに生活があって、それらに“税”というものがどう関わっているのか?」ということを、その“税”の持つ役割を伝えるものです。「“税”=お金を払うもの」と思っている子どもたちも少なくありません(大人もですが)。そうではなく、「社会に必要なもののために”税”が使われている」ということを、授業の中で学んで、体感して、考えてもらう。という構成になっています。
「地域の安全を守る交番や消防署は、週末に友だちと遊ぶその公園は、今日君たちが歩いてきたその道は。そして、今通っているこの小学校は。」それら身近なものに”税”が使われているということを「自分ごと」として考えてもらうことで、その役割の大きさを理解してもらえるように心がけております。さらに、その「社会に必要なものとは何か?それは誰が考えるのか?」というように、少し「民主主義」にも触れつつ話を展開していき、「この教室に必要なものは何か?その費用はどのように負担するのか?」とふたたび身近な話題へと引き込みます。
このような問いを投げかけると、子どもたちからは多種多様な意見や考えがどんどん出てきます。そこで出た意見や負担方法などを上手く講師が交通整理して、これらを実社会の“税”の仕組みに当てはめて説明をしています。例えば、「クラスのみんなで均等に負担する方法」。これは、消費税などの税率の仕組みです。また、「先生はたくさんお金を持っているからその分多く出し、クラスのみんなはお小遣いの金額に比例して負担する方法」。これは、所得税などの税率の仕組みです。
このように、“教室”というミクロな世界から、“税”を通して、“社会”というマクロな世界を考える。『租税教室』は、“税”にのみフォーカスされがちですが、「“税”を通して、“社会”を考える。」というところに真の意義があるのではないでしょうか。
今回ご紹介した内容は、紙面の都合上、小学生向け授業内容の一部ですが、このほかにも、面白いクイズを織り交ぜたりなど、子どもたちを飽きさせないような工夫が随所に散りばめられていて、ワイワイと楽しく授業をさせていただいています。子どもたちからもらう質問の中には切れ味鋭いものもあり、私自身ハッとさせられることも少なくありません。
なお、中学校や高校で行う場合には、また違った内容・アプローチで『租税教室』を実施しております。
私は2024年に当支部に入会してから、既に小学校・中学校で併せて計6コマを担当させていただきました。小学校等での『租税教室』は、前述のとおり、普段”税”について考える機会が少ない子どもたちに、“税”について、その役割や必要性について伝えたりと、社会的意義のある時間となっております。しかしながら、その授業時間は約45分で、1度の機会で“税”のすべてを伝えるのは難しく、断片的なものとなってしまうのも事実です。よって、子どもたちが“税”について網羅的に学習する機会や、日ごろから”税”について触れる機会をどのようにしたら増やせるのか?ということを、日々考えているところでございます。
今やインターネット、YouTubeなどの普及もあり情報に溢れ、簡単に様々な情報にたどり着ける世の中です。“税”についても、その例に漏れません。一方で、そのすべてが正確な情報とは限らず、その方ご自身のフィルターを通した正しい情報の取捨選択も難しくなっていると感じでおります。これを鑑みると、税制についても、様々な情報を見聞きし、誤った見解のもと問い合わせをしてくる方が少なくないのも想像に難くありません。
このような状況が、将来に向かってこれ以上蔓延らないためには、やはり義務教育の早いうちから継続的な租税教育の機会を設け、「正しい」租税リテラシーを持ち続けることが重要であると考えます。
さて、長々と書いてしまいましたが、ここまで読んで、皆さまそれぞれ思うとことがあるかもしれません。ぜひそのご意見を租税教育推進部まで、または別の場で、お届けいただけますと幸いです。