第29話 『迫り来る悪魔』


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――その夜。

俺たちは四人で、バーベキューの準備をしていた。男性陣は食材調達班ということで、さっき車で近くのスーパーまで買い出しに行った。
「ただいま!」
「おかえり~。買い出しありがとう!」
華と璃子ちゃんが応える。そこに沙希の姿が見当たらない。
「あれっ?沙希は?」
俺は二人に聞いた。
「沙希は、ちょっと体調が良くないみたいで。熱っぽいから二階の部屋で横になってる。」
華が心配そうに応えた。
「ちょっと、様子見てくるわ。」
俺は階段を駆け上がった。二階の部屋のドアノブに手を掛け、押すようしてドアを開く。
「沙希、具合はどう?」
「あっくん、ちょっと熱が出ちゃったみたい。頭痛もするし、目が霞むわ。」
「大丈夫?もう少し休んでて。食欲はありそう?」
「食欲もないの。みんなでバーベキューやってて。私のことは気にしなくって大丈夫。だたここで、寝てるだけだから。」
「わかった。また後で、様子見に来るね!」
俺は部屋を出た。久しぶりに、沙希は身体が辛そうだった。さっきまではピンピンしてたのに。
「よしっ、じゃぁ始めるか!」
バーベキューの準備が出来たので、俺と涼介、華、璃子ちゃんは、庭へ出た。涼介の音頭で、バーベキューが始まった。辺りは真っ暗で、庭を照らす灯りが、スポットライトのように俺たちを照らす。バーベキューの煙が、狼煙を上げるように、真っ直ぐ空に上がっている。どこかで何かが始まっているような雰囲気だ。俺は沙希が心配になった。

バーベキューも終わり、建物の中へと戻る。俺は、二階に沙希の様子を見に行った。そっとドアを開くと、向こうを向いて動かない。きっと寝ているのだろう。俺はそのまま、そっとドアを閉めた。
「篤、じゃぁ、俺らはテントに行こうぜ!ボーイズトークの始まりだ。女子禁制のな。」
涼介は、楽しそうに言った。俺と涼介は、リビングに華と璃子ちゃんを残し、テントへ向かった。テントは庭の一番奥に張ってあった。中は結構広い。四、五人くらいは川の字に寝れそうな広さだ。テントというよりは、屋根や壁が、テントの素材で出来ている小屋みたいな感じだ。俺と涼介は、テントの真ん中にあぐらをかき、真ん中に吊るしてあったランタンを点けた。ランタンの暖かいオレンジの灯りが、テント全体を照らした。
「篤、最近どうだ?沙希との同棲生活とか。」
「うん、沙希も俺の家を結構気に入ってくれてるよ。毎日朝出て行くときに、見送る人がいるのは、気分が良いもんだね。週明けの月曜日からも、気落ちせずに頑張れる。」
「それは良かったな。順調そうで。」
涼介は、ちょっと目を細めて続けた。
「それで、夜の方は?」
「夜の方?」
「一緒に暮らしたら、毎晩ヤり放題か?羨ましいわ。」
俺と涼介の大好物。ぶっちゃけトークが始まる。
「うん、最近はほぼ毎日してるかな。沙希はその時間が一番好きなんだってさ。目が見えなくなってるとか、嫌なことを何もかも全て忘れられて、気持ちが開放された気分になるみたい。」
「でも、そんな毎日してたら、マンネリ化しない?」
「ううん、大丈夫。何もベッドの上だけじゃないし。部屋の至るところでしてる。トイレとか、風呂場とか、ベランダとか。」
「ベランダでも!」
涼介は興奮したように言った。涼介、ベランダどころでの話ではないよ。俺はそれ以上言っても良いものかと一瞬考えたが、せっかくのボーイズトークだ。勢いに任せて言ってしまった。
「ベランダなんて可愛いもので、外でもたまに。」
「外!?」
涼介の身体が前のめりになる。
「公衆トイレとか、公園のベンチとか、河川敷とか。」
同棲をして以来、俺と沙希はオフホワイトのローブを着て、夜に散歩するようになった。例のごとく、お互いその下は何も身に着けてない。この方が、心も身体も開放されて、ありのままでいられるという沙希の希望だった。あの河川敷には何度も通った。仰向けになってプラネタリウムのような星空を見上げるのが、俺も沙希も好きだからだ。そして、最終的には身体を重ねる。俺たちの定番の散歩コースだ。でも、いくらなんでも涼介にそこまでは言えないが。
「結構、篤も沙希も大胆だな。」
どちらかというと、沙希の方が大胆だ。『今を生きる』と心に決めてから、その大胆さは増しているような気がする。俺ばっかり質問されるのも癪なので、ここからは俺のターンだ。
「そういう涼介はどうなの?華とは?」
「俺らも仲良くやっているよ。たまにドライブに行って一泊して帰ってきたりね。一緒に暮らしてないから、セックスはラブホがほとんどだけどね。」
涼介たちも上手くいっているようで安心だ。
「あぁ~華とヤりたいな~。」
涼介はそう言うと天を仰ぐように、背中から倒れた。よし、ここは俺がひと肌脱ごう。
「わかった!俺がひと肌脱ごう。じゃぁ、俺が華をここに呼んでくるよ。ちょっと待ってて。今晩は、二人で楽しんで!」
そう言うと、俺はテントの外へ出ようとした。
「篤、サンキュー!沙希は横になってるし、篤は楽しめなくって残念だな。」
「ううん、もう楽しんだから大丈夫。」

涼介の不思議そうな顔を背に、俺は建物へ戻った。
「華~!涼介が呼んでるよ!」
俺は華に言う。華は嬉しそうな顔をして、建物を出て行った。
「飲みなおそうか。」
沙希は、まだ二階で寝ているので、一階のリビングには、俺と璃子ちゃん二人きりだ。俺は空いてるグラスに発泡酒を注いで、ソファに座る。それに続くように、璃子ちゃんも俺の横に腰掛けた。
「・・・。」
沈黙が俺ら二人を包む。その沈黙を破ったのは、璃子ちゃんの方だった。
「私、さっき海で二人でいるの、見てたんですよ。何をしてたかも知ってます。それで、私、思ったんです。私は、沙希さんにはかないません。顔も沙希さんみたいに全然可愛くないし、おっぱいも大きくないし。それに、あんなにキラキラ生き生きしてる人、見たことない。沙希さんをあんな風に輝かせられるのは、悔しいですけど、やっぱり吉田さんしかいないんだなって思いました。」
璃子ちゃんは、大粒の涙を流して、顔を赤くしながら俺に訴えた。
「璃子ちゃん・・・。」
俺は無意識に、璃子ちゃんを優しく抱きしめた。ハッと気付いて、すぐに離れる。璃子ちゃんは、俺の目を真っ直ぐ見て言った。
「吉田さん、お願いがあります。最後に、私のこと、抱いてくれませんか?そうしたら、私、諦めがつきます・・・。」
子猫のような目が、俺の心を引き込もうとする。俺の心は揺れた。俺は璃子ちゃんにも悪いことをした。これで借りが返せるなら、璃子ちゃんに従うか・・・。俺が迷っていると、璃子ちゃんは言った。
「やっぱり吉田さんは、吉田さんですね。冗談です。私、もう寝ますね。おやすみなさい。」
そう言い残すと、璃子ちゃんは、大粒の涙を床に落としながら、階段を駆け上がり二階の部屋へ入ってしまった。
「これで、良いんだよな。」
俺は呟く。窓の外のテントを見ると、ぼんやりと中の二人のシルエットが見える。あの二人も楽しんでいるようだ。俺はその日、リビングのソファで一晩を明かした。

――翌日。

「キャーーーーッ!」
早朝六時。沙希の叫び声で、俺は目を覚ました。二階からだ。部屋には沙希と璃子ちゃんが寝ている。
「まさかっ!」
俺の眠気は一気に吹っ飛んだ。急いで階段を駆け上がる。ドアを開けたら、璃子ちゃんが、沙希の肩を支えていた。
「沙希、どうした?大丈夫?」
「沙希さんが・・・。」
璃子ちゃんと沙希の身体は震えている。震えた声を絞り出すように、沙希は応えた。
「左目が・・・。左目が見えないの。何も見えないのよ!それどころか右目にも影が出来てる・・・。」
俺と璃子ちゃんは絶句した。いつか来るとか、頭のどこかで思ってはいたが、悪魔は突然現れた。いや、俺や沙希の知らないところで、ジリジリと病魔が迫っていたのかもしれない。ついに始まってしまったのか、運命のカウントダウンが。
「沙希落ち着いて。璃子ちゃん、涼介と華を起こしてきて!病院!病院に連れて行こう!」
「わかりました!呼んできます!」
璃子ちゃんは、恐怖から逃れるように、勢いよく部屋を出て行った。
「沙希・・・。」
俺は沙希を強く抱きしめた。沙希は力なく、ただただ、その場に座っていることしか出来ない。まるで魂が抜けてるみたいだ。
「沙希!篤!大丈夫か?」
涼介が駆け寄った。
「沙希、お水、持って来たよ。」
華は、沙希にコップを渡した。ゆっくりとそれを飲むと、沙希は少し落ち着きを取り戻した。
「ついに・・・、この時が来ちゃったみたい。」
涼介と華は、まだ何が起きているのか状況が飲みこめていない様子だ。沙希は何度も左目を擦った。
「見えない・・・。見えない・・・。」
沙希は、何度も小さな声で繰り返した。涼介も華も、状況をやっと理解したようだ。華は、沙希のことを強く抱きしめ、声を枯らしながら嗚咽した。璃子ちゃんも放心状態で、ただただ見守ることしかできなかった。涼介は涙を拭って言った。
「篤、沙希の病院でどこだっけ?」
「主治医がいるのは、中央記念病院だけど。」
「中央記念病院か。ここからは、少し遠いな。とりあえず、この辺りの大きな病院を探そう。」
沙希は倒れたわけではなかったので、救急車は呼べない。そのため、連れていく病院を自分たちで探さなければならなかった。
「篤、熱海駅の近くに熱海総合病院っていう、大きい病院がある。とりあえず、ここに連れて行って、診てもらおう。」


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