第25話 『おばあちゃんの言葉』


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「そこまでっ!ペンを置いてください。今から答案を回収します。確認が終わるまで、そのまま席でお待ち下さい。」
その声を聞いて、俺は天を見上げた。今年の税理士試験が終わった。結構難しい問題が出題されたが、俺は全力を尽くした。やりきった。悔いはない。そのまま、後ろに倒れそうになったが、椅子の背もたれがそれを支えた。身体が宙に浮く感覚。オカルトじみたことは、あまり好きではないが、今なら空に浮かべそうな気がする。
「確認が終わりましたので、退出して大丈夫です。皆さんお疲れ様でした。」
試験監督の声が、俺を少し現実へ引き戻した。俺は、急いで教室を出た。沙希の待つ、あの銅像の前へ。

「沙希、お疲れ様~!」
俺の頭の中は、沙希のことでいっぱいだった。早く沙希に会いたい。話したい。触れ合いたい。
「あっくん!お疲れ様!」
沙希は眩しい笑顔で、俺に手を振り視線を送った。銅像の前で、オフホワイトのカップルが出会う。沙希は俺の胸に、勢いよく飛び込んだ。
「早く、行こっ!」
そして、急かすように、俺の手を引っ張り、正門の方へと向かう。小熊軽信の目には、俺ら2人の後姿は、どう映っているのだろうか。
「へぇ~、キレイなホテルじゃん。」
沙希は、エレベーターに乗りながら行った。エレベーターは十階で止まる。
「一番奥の部屋。一〇〇一号室ね!」
沙希は跳ねるように廊下をスキップしながら、部屋の前へと向かった。こんな子どもみたいな沙希を見たことがなかった。きっと、沙希も試験が終わり、浮かれモードに違いない。カードキーを挿し込み、部屋の中へと入る。部屋のドアを閉めたころには、俺と沙希は、本能に支配されていた。オフホワイトのローブの前を開けた。白い肌と見事な曲線が露になる。
「えっ?」
俺は思わず声を上げた。ローブの下は、真紅の下着一枚で、それ以外、肌を隠すものはなかった。
「それで試験受けたの?」
ビックリして、半分笑いながら聞いてみたが、沙希は平然と応えた。
「そうよ。だって私、家では裸族でしょ?こっちの方が自然体なの。そうだ、窓際行こっ!」
沙希は、また俺の手を引いた。まるで、今まで抑えていた欲望を爆発させるように、沙希は積極的だった。ここは十階だ。窓の外を見下ろすと、まだ、試験終わりの受験生の濁流が見えた。沙希は、俺を立たせたまましゃがみ、自分のものだと見せ付けるように、顔を激しく前後させる。身体は熱を帯びてきた。今度は、腰をくの字にして、窓に両手をついた。沙希のおっぱいが細い身体にぶら下がる。俺は、真紅の下着を少し指でズラして、後ろから激しく、沙希のお尻にぶつかる。その乾いた音が、部屋全体に響き渡った。重力に耐えるくらい張りのあるその膨らみは、サンドバッグのように揺れる。沙希は、目を瞑り、全身で、今、この瞬間を感じているようだった。
「下から見えちゃうかなっ?」
沙希はおどけるように、イジワルに俺に言った。
「下からは、ギリギリ見えないんじゃない?」
俺がそう言うと、沙希は、おっぱいを窓に押し付けた。
「これならどう?」
おっぱいが窓に吸盤のようにくっついている。これなら、目の良い人には、見えるだろう。というか、向かいのビルから丸見えじゃないか。幸いにも、人はいなそうだ。俺も、この光景を窓の外から見てみたい。この何とも言えないスリルに、さらに興奮した。俺は突き上げるように、沙希の気持ちに全力でぶつかった。

――17:45。

あれから、俺らは我を忘れて、三回戦くらいしただろうか。気付けば、もう十七時四十五分だ。チェックアウトは十八時。そろそろ部屋を出なくては。試験の呪縛から解き放たれた沙希に、怖いものはなかった。
「これだけ着れば良っか。」
俺は、着てきた服をゆっくりと再び身に纏っていたが、沙希は露になった裸に、オフホワイトのローブを着ようとしている。
「せめてパンツは履きなよ!風邪引くよ。」
「冗談よ。私、何も身に着けていない方が、自然体で良いのに。」
沙希は俺に従い、不満な表情で着てきた服を再び身に纏った。
キャリーバッグを持って、沙希と一緒にホテルを出た。まだ外は明るい。目の前には、バスターミナルがあった。行きは電車で来たが、帰りはバスで帰ろうか。
「試験、終わったね。今日からうちに来る?」
俺は沙希に言った。試験が終わったら、一緒に暮らそうと約束していたからだ。
「今日は一旦帰らなきゃ。部屋を片付けて、あっくんの家に持ってくもの準備してから、改めて行くねっ!今週末あたりから、お邪魔しようかなっ。」
「そうだね、引越しみないなもんだもんね。大変だったら準備手伝うから、言ってね!」
週末から、念願の同棲生活が始まろうとしている。そこには、どんな日々が待っているのだろうか。
「楽しみだね!」
沙希も思いは一緒だ。同棲なんて、人生で初めてだ。ずっと一緒にいて大丈夫だろうか?まぁ、そういうことは、暮らしてみてから考えよう。
「沙希、そういえば、次の病院の定期検査っていつだっけ?」
「再来週の水曜日だったかな?」
「そっか、再来週か。退院しても、あの病院まで月二回行くのも大変だね。」
「まぁねっ。でももう慣れちゃった。小旅行の気分で、行ってくるわ。」
バス停の時刻表を見る。次のバスが来るのは、あと十五分後だった。まだ全然時間があるので、バス停のベンチに2人で腰掛ける。しばらくすると、一人のおばあさんがバス停に近づいてきた。地面に貼り付けられている黄色い目印を、白く長い棒で念入りにつつきながら、一歩一歩前に進んでいた。何かを探しているようだった。次の瞬間、おばあちゃんは、手に持っていた白い棒の下の方を持って、旗を掲げるように、高く振り上げた。
「あのおばあさん、助けを呼んでる!私、本で見たことあるわ。棒を高く掲げるのは、助けて欲しい時なんだって。」
沙希はおばあさんに急いで駆け寄り、声を掛けた。
「おばあちゃん、どうしたの?」
「あら、ありがとうね。たぶんこのあたりに、小銭を落としてしまったのよ。」
確かに、おばあちゃんの一メートルくらい横に、小銭が散乱していた。沙希は、おばあちゃんに優しく言った。
「おばあちゃん、小銭見つけたわ。ちょっと拾ってくるからね。」
沙希は、小銭を拾い集めた。
「おばあちゃん、この小銭、どこにしまったら良い?」
「良いの、これからバスに乗るから。私の手の上に、乗せて下さる?」
「はい、どうぞ。」
「ありがとうね。きっと若い人ね。あなたみたいな子が増えたら良いのに。最近は、見てみぬフリをしてる人も多くてね。私、目が見えないけどわかるのよ。人が通る足音、風の流れ、空気の振動、五感のうち視覚以外の感覚を研ぎ澄ませるとね、見えてくるの。」
沙希は、その言葉に、真剣に耳を傾けていた。
「おばあちゃん、目が見えなくって、怖くないの?」
「それは最初は怖かったわよ。だって、ある日、突然何も見えなくなるんだもの。でもね、光を失ったことは確かに大きなことだけど、その分、得たものもあるわね。」
おばあさんは、微笑みながら、優しく沙希に言った。沙希の目からは涙がツーっと流れ落ちた。きっと自分に照らし合わせているのだろう。自分の行く末を想像しながら、必死に考えているのか。おばあさんの話を聞いて、今、沙希の頭の中には、希望が見えているのか、絶望が見えているのか。俺にはわからなかった。
「じゃぁ、私は、行くわね。」
そういうと、ちょうど来たバスに乗り込んだ。
「あっ、このバス、私たちも乗るやつだ。あっくん、これこれ!」
沙希はおばあちゃんを支えるようにバスに乗った。俺もその後に続く。バスの車内は空いていた。沙希とおばあちゃんが座った席の正面に、俺は座った。
「あらっ、もう一人いたのね。こんにちは。」
「おばあちゃん、こんにちは。」
俺も挨拶した。
「あなた、こんな優しい女の子、絶対に手を離してはダメよ。絶対にね。」
「もちろんです。ずっと大切にします。」
おばあちゃんは、満足そうな表情だった。
「あなたたちは、夫婦なの?仲良さそうね。」
「そうよ、おばあちゃん。」
沙希は即答で応えた。俺は少しビビッてしまった。結婚なんて、今まで考えもしなかったから。
「末永くお幸せにね。私の主人は、もう旅立ってしまってね。身体もこんなんでしょ。出かけたくても、なかなか遠くには行けないのよ。でも、人生捨てたものじゃないわ。この歳でね、また一つ『趣味』を見つけたのよ。生きてさえいれば、身体が動けさえすれば何でもできる。だから、今を必死に生きるの。」

おばあちゃんは、この後も、沙希と俺に色々話してくれた。沙希の表情は真剣だった。おばあちゃんの言った言葉は、沙希の心に、どのように響いたのだろう。


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