第23話 『勉強は欲との戦い』


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予備校の講義も、残すところ、あと二回となった。難易度も徐々に上がり、時間内ではとてもではないが、解き切れない問題が出題される。退院後、体調を見ながらだが、沙希も教室の講義に復帰した。本試験まであと約三週間。

「そういえば、篤、試験会場どこだっけ?」
涼介が俺に聞く。
「俺はね、遅稲田大学だったかな。座教大学が良かったんだけど。」
「そっか、俺は座教大学。華と沙希は?」
「私も、座教大学だったよ!」
華が続いた。
「私は遅稲田大学。病気のこともあるから、特別措置みたいなやつで、別会場受験になったよ!」
沙希が言った。別会場受験なんてあるのか。
「そんなのあるんだ。」
「そうなの、試験中に何か緊急事態があったときに、すぐに対応してくれるんだって。ないに越したことはないんだけど。教室の人が突然倒れたら、周りの人たちが動揺しちゃうでしょ?そういう意味もあるんじゃないかな。」
「まぁ、みんな同じ会場じゃなくて残念だけど、それぞれ頑張ろう!まぁ、カップル同士に分かれたからちょうど良いね。」
「試験の出来でケンカしないようにしなきゃねっ。」
華は、涼介の方を見て言った。
「遅稲田大学、俺、そういえば、簿記一級の試験のときに行ったわ!」
「私も!」
「俺もだ。」
税理士試験を受験するには、一定の要件を満たしてないといけない。特定の単位を取って大学を卒業してるとか、簿記一級に合格しているとか。俺ら四人は皆、簿記一級に合格して、受験資格を得ている身だ。大学生が税理士試験を受験するときは、ほとんどこのルートかもしれない。

――本試験五日前。木曜日。

「お疲れ様でした!明日からお休みを頂くので、よろしくお願いします!」
俺は、事務所で書類を整理し、キャビネットにしまう。
「お疲れ様でした。吉田さんは、明日から試験休み取るんですねっ。」
璃子ちゃんが話しかけてきた。
「そうそう、ちょっと理論がギリギリになりそうで。あと五日間、自宅に篭って、猛勉強かな。」
「そうなんですね、私も『簿記』ちょっと厳しいですが、試験休みは来週の月曜からにしました。そういえば、来週、週明けから台風が来るみたいですね。台風来ちゃったら、試験ってどうなるんですかね?」
「どうなるんだろう。さすがに電車が止まったら、時間繰り上げとかになるんじゃないかな。日程の延期はたぶんないだろうけど。」
「勉強に集中したいのに、そっちも気になりますね。」
「そうだね、俺、もう帰るね!お疲れさま!」
「お疲れ様でした!」
週明けから台風か。もし直撃したら、試験はどうなるんだろう。そういう場合も、なんとか会場までは辿り着かなくては。

「もしもし、沙希?なんか、週明け台風来るみたいだね。」
「そうだね、進路外れてほしいけど、どうなんだろう。」
「俺、一限目の『簿記』からだから、遅れられないなぁ。」
「じゃぁ前泊とかしたら?」
「前泊?そっか、会場周辺のホテル取っちゃえば良いのか。そうしようかな。もしそうしたら、沙希も一緒に泊まる?」
「私は、やめとく。だって、そんなことしたら、他のことに集中して、勉強どころじゃなくなるでしょっ。」
「それもそうだね。せめて前日は、勉強に集中した方が良いよね!」
俺と沙希は、全くその通りだと、ケラケラ笑った。
「あとで、ホテル予約してみよっと。」

――本試験、前日。月曜日。

俺は試験に必要なものや着替えをキャリーバッグに詰めた。試験の前泊とはいえ、一泊二日の小旅行みたいだ。気分がウキウキする。台風の進路は、相変わらず微妙だ。スピードが速まれば、夜中のうちに通り過ぎてしまうらしいが、朝の通勤ラッシュの時間帯を直撃する可能性もまだあるらしい。試験会場までは、うちから電車で約五十分だ。平日昼間ということもあってか、電車は空いている。今のところ、雨もそんなに強くはない。俺は、いつものように理論を聴きながら、テキストを開いた。

「ここか。」
低田馬場駅に着いた。俺はキャリーバッグを手に掛け、電車を下りる。ホームは人がまばらで、営業のサラリーマンっぽい人しかいない。駅の改札を出る。
「ちょっと会場の下見をしてからホテル行くか。」
荷物もあったので、駅前でタクシーを拾った。
「遅稲田大学の正門まで、お願いします。」
「あぁ、小隈軽信像のところでよろしいですか?」
「あっ、たぶんそこで大丈夫だと思います。」
タクシーが発車した。ホテルは遅稲田大学のすぐ横にあるところを予約した。『簿記論』が終わってから、『消費税法』が始まるまで、四時間半ある。どこかで時間を潰すのもあれなので、ホテルのチェックアウト時間を夜の十八時にしてある。これなら、一旦部屋に戻って勉強が出来るし、『消費税法』の試験後にも戻ってこれるので、重いキャリーバッグも部屋に置いて行ける。タクシーは遅稲田大学の正門の前に止まった。俺は料金を払い、タクシーを降りた。
「あれが、小隈軽信像か。」
威圧感を放って立つその銅像が、俺を大学へと迎え入れる。
「また明日来るから、待ってろ!」
周りには誰もいなかったので、その像を指差しながら、ちょっとキザなことを言ってみる。よし、下見も済んだことだし、ホテルに向かおう。ホテルは、正面正門の横断歩道を渡ったところにある。狭い敷地の中に立てられているその建物は、デザイナーズホテルみたいだ。
「一〇〇一号室になります。」
チェックインを済ませ、カードキーを受け取った。フロント奥のエレベーターで十階へ上がった。カードキーを挿し込み、部屋に入る。
「良い感じじゃん。」
白を基調とした部屋は、デザイナーズホテルという名に相応しくキレイだった。部屋自体は狭い。一番奥には大きく取られた窓がある。窓からは、さっきの小熊軽信像が見下ろせた。窓の手前左側には、ダブルベットが一台。そして、右側には、大きなデスクがあった。勉強するには十分に広くて、捗りそうだ。なかなか大きなデスクがあるホテルは少ないので、こういうビジネスホテルを取れて良かった。
「よしっ、やるか!」
本試験前の本当のラストスパート。メラメラした闘志を燃やして、机に向かった。

「おっ、もうこんな時間か。」
ふと気付けば時計の針は十九時を回っていた。十六時くらいにチェックインしてから、もう三時間も経っている。俺はチェックイン前にコンビニで買った冷やしうどんを口の中に流し込んだ。試験前は消化の良いものに限る。お腹を壊して、試験中にトイレに行くなんてことになったら大変だ。
「ふぅ~。」
大きく息を吐いた。無意識のうちに、右手がテレビのリモコンに伸びていた。
「ここでテレビをつけちゃったら負けだ。」
自分の『テレビが見たい欲』に逆らうように、リモコンを遠くへ投げた。テレビをつけたら、あっという間に一時間は経ってしまう。静寂が部屋の中を包む。ホテルに篭ってから理論暗記しかしてないので、ストレスも溜まる。今度は、俺の右手はスマホに伸びていた。
「ここでスマホをいじったら負けだ。」
自分の『スマホに触りたい欲』に逆らうように、スマホをベッドの上に置いた。スマホにはいろんな誘惑がある。ゲームなんて始めた暁には、軽く二時間は経ってしまう。再び静寂が部屋の中を包む。
「あぁ~ムラムラしてきた。」
俺が税理士受験生になってから、一番のストレス解消法といえば、一発抜くことだ。恥ずかしながら、ほぼ毎日寝る前にやっている。毎日、歯を磨くように、1日のルーティーンに組み込まれている。頭の中が性欲に支配され始めた。どこかから悪魔のささやきが聞こえる。せっかくホテルに一人で泊まっているんだ。なかなかある機会ではない。
「デリヘルでも呼んじゃおうか。」
頭が本能に支配されていく。ここでデリヘルなんで呼んでしまったら、三時間は無駄にしてしまう。一度本能が暴走してしまったら、もはや自分では止める術がない。右手がベッドの上のスマホに伸びる。あぁ、もうダメだ。せめて、自分で抜けば、十五分ぐらいで終わるのに。その時、タイミング良くスマホが鳴った。
「沙希からだ!」
救世主現る。本能に押されていた理性が、本能を押し戻す。
「あっくん、勉強の調子はどう?」
「今、ちょうど休憩中。十六時くらいにホテルにチェックインしたよ!」
「無事にチェックインできて良かった。明日の朝は、台風も遠くへ行っちゃいそうだね。」
俺は、沙希に、今までやっていた葛藤を話した。
「・・・、というわけでなんだよ。」
「ちょっと!デリヘルって!それって浮気にカウントされないわけ?」
沙希が半分冗談で怒った。
「確かにそうだね。でも勉強のストレスで、どうにかなっちゃいそうで。」
「わかったわ。じゃぁ、私が良いことしてあげるっ!LINEでテレビ電話しよっ。」
すぐに沙希から、LINE電話が掛かってきた。電話をテレビ電話に切り替える。
「久しぶりに顔見た気がするねっ。」
「そうだね。試験前に、沙希の顔が見れて良かったよ。」
「そんなにストレス溜まってたら、これだけじゃ、物足りないでしょっ?この前、ドエロいのが欲しいって言ってたでしょ?見ててね。」
沙希は、画面の向こうで、スマホをベット全体が映る位置へ固定した。沙希はベットの上で、部屋のトレーナーを脱ぎ始めた。張りの良いおっぱいが、トレーナーからポロンと零れ落ちた。そして、うつぶせになって、膝を立て、自分の割れ目をカメラに見せ付けるように、両手で広げた。
「あっくん、見える?」
「ワォッ!」
気付けば、俺も服を脱いで裸になっていた。下半身がゾワゾワと熱を帯びる。俺の右手は、その熱気の元へと伸びる。
「沙希、見えるよ。そっちからも見える?」
「うん見えるよ。」
沙希は、そのままの体制で、何かを右手に取った。薄ピンク色のそれは、先っぽをうねらせている。沙希は、自分の割れ目にそれを何度か擦り付け、そのまま奥へと押し込んだ。
「ほほっ。」
俺の下半身はますます熱くなる。ウィンウィンという音と共に、ジュボジュボと湿った音が聞こえてきた。
「沙希、エロすぎ!」
俺もその動きに負けじと、右手を上下に激しく動かした。
「あっ・・・。あっくん、これからも、私だけを見てね。」
沙希の喘ぎ声が漏れてくる。エロ過ぎる。スマホを通してだが、向こうの熱気もこっちに伝わってくるようだった。もう限界だ。
沙希と俺は、同時に崩れ落ちた。

――翌日。本試験当日。

目が覚めて、ベッドサイドの時計を確認する。時刻は七時くらいだ。昨日は、沙希のおかげで、ぐっすり眠れた。俺は、スマホを見る。あの後、沙希からの連絡はない。昨日、あの時、LINEテレビ電話中に咄嗟にスクショを何枚か撮った。それをもう一度見た。昨日のことが思い出される。沙希は一見おしとやかに見えても、斜め上を行くような大胆さを持っている。そこら辺も、沙希の好きなポイントだ。
「それにしてもエロいなぁ。」
こういうのがリベンジポルノとかに使われるのだろうか。『簿記論』の試験は九時からだ。俺は、それをお守り代わりに、『簿記論』の試験会場である教室へと向かう。
再び、小隈軽信像と対峙した。俺は沙希にLINEを送る。
「『簿記論』の試験、行ってきます!」

いざ、出陣だ!


シーン画集 チラ見せ

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