第22話 『得点効率を考える』


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――七月。

直前期も終盤に入り、受験生の勉強熱も高くなる。合格ラインに滑り込むべく、自習室は満員で、ピリピリした空気が流れている。みんな上位集団から振り落とされないように必死である。『消費税法』でいうと、この時期にはもう、計算の知識は完成していて、あとは理論の制度を上げるために、理論教材を何度も何度も繰り返し見て、穴をなくす作業に入る。この時期が一番辛い。覚えては忘れ、また覚えては忘れ、自分の記憶力に絶望しながら、また覚えなければいけないという苦行である。

「あっくん、大ニュースだよ!」
沙希からLINE電話が来た。その声は、最近聞いた中では、一番明るい。
「なになに、どうしたの?」
左目の影がなくなったのだろうか?それとも、宝くじでも当たったのだろうか?
「私ね、とりあえず退院できることになりました~!パチパチパチッ。」
「え~!!!良かったじゃん!!!」
「まぁ、経過が悪くなったらまた退院だけどっ。」
「そっかぁ、でも退院できるくらいになったんだから、喜ばしいことじゃん!おめでとう!」
「それで、いつ退院するの?」
「今度の日曜日。昼間に先生の診察を受けて、問題なかったら、そのまま帰れるわ。」
「そっか、じゃぁ俺が病院まで迎えに行くよ。」
俺は飛び跳ねたいような気分だ。
「ありがとう!じゃぁ、また日曜日に!」
ついに退院か。本当に良かった。今はまだ七月。沙希が強く望んでいた今年の試験も、なんとか受けれそうだ。

――翌、日曜日。

講義が終わり、急いで電車に飛び乗った。そして、約二時間かけて沙希の入院する中央記念病院に来た。空は青く澄み渡っている。俺の着ている、沙希とお揃いの白いローブが風でなびく。
「さて、迎えに行こうか!」
病院のエントランスを入り、会計の奥のエレベーターで五階に上がる。そして、絨毯の敷いてある廊下を進み沙希の部屋の前へと来た。俺の顔の表情は緩みっぱなしだ。こんなに嬉しい日はない。
「沙希~!」
部屋に入ると、俺は沙希に抱き着いた。沙希もそれに応えるように、俺の背中に手を回す。沙希は声を上げて泣いていた。俺も嬉しくて泣いた。オフホワイトのローブは、嬉し涙で染まった。
会計で退院の手続を済ませ、沙希と一緒に病院の外に出る。日差しが眩しい。これから冒険に出る勇者のように、俺と沙希のローブは、正面から風を受け、ヒラヒラとなびいている。
「沙希、俺の家に来ない?」
「良いよ。泊まりに行くってこと?」
「違う、税理士試験が終わったら、一緒に暮らさない?」
俺は真剣な表情をして、沙希に言った。せっかくこちら側の世界に戻ってきたのだ。もう、離れたくない。そういえば、突然の入院とかもあって、沙希はちゃんと俺の自宅に来たことなかったっけ。でも、きっと気に入ってくれると思う。周りには、大きな公園もあり、星空がキレイな河原もある。
「良いよ。そうしたら、あっくんと常に一緒に居られるしねっ。」
「そうだね!試験までは、また追い込みで、なかなか会えなくなりそうだしね。」
決まりだ。今年の試験は、また違った区切りになりそうだ。試験が終われば、沙希との同棲生活が待っている。あと約一カ月、死ぬ気で頑張ろう!

いよいよ試験へのカウントダウンが始まる。『消費税法』の試験は、本試験一日目の十五時半からだ。泣いても笑っても、その時間はやってくる。残された時間で何ができるか、ラストスパートをするのみだ。この前受けた模試は、散々の出来だった。D判定で、計算は上位三十%、理論は上位五十五%で全体では上位四十五%くらいだ。だいたい、予備校の上位三十%くらいが合格圏内だと言われているので、俺はボーダーのはるか下だ。沙希は申込みの都合上、全国模試は受けていない。本試験はほとんどぶっつけになってしまうだろう。涼介と華は、模試は上手くいったみたいで、二人とも仕上がりは順調そうだ。自習室は一年で一番人がいるといっても過言ではない。俺は仕事や大学が終わったら予備校の自習室に直行していたが、この時期、自習室は人で溢れかえっていて、逆に集中できなくなった。だから、最近は、自宅で勉強をするようにしている。前は、自宅では誘惑がたくさんあって、勉強なんてと思っていたが、今となっては、快適だ。人間慣れれば、どこでも勉強できると思う。

「もしもし、沙希、勉強の調子はどう?」
俺と沙希は、毎日23時になると、LINE電話をするようになった。寝る前に、その日の出来事や勉強の進捗などを話している。入院中は、あんまり頻繁に電話はできなかったが、退院した今は、それも自由だ。
「今日は理論中心にやってたよ。」
「俺は計算中心だけど、この前の模試で理論が散々でさ。そうだ、沙希って、演習とか、理論から解く派?計算から解く派?」
「私?私はね、計算から解く派かな。」
「そうなんだ。計算から解く理由とかあったりする?俺、どっちから手を付けようか、最近試行錯誤してて。」
「あっくん、得点効率って考えたことある?私、色々考えて、分かったことがあるの。」
「得点効率?考えたことなかった。」
「私ね、入院中暇だったから、二時間問題で、経過した時間と、その時間で解いた問題の、そこまでの配点をグラフ化してみたの。」
すごく興味深い話だ。ここに沙希の頭の良さを感じる。
「まずね、理論問題っていうのは、ベタ書きと事例問題に分けられるけど、ベタ書きについては、配点がまんべんなく比較的均等にあるでしょ?それで、ベタ書きは覚えてるか、覚えてないかだけだから、時間が進むにつれて、それに比例して獲得する得点が増えていくの。」
なるほど。
「それに対して、事例問題は、文章を読んだら、少し考えたり、解答の柱を書き出したりしてから答案に書くから、少し考える時間がどうしてもでてくるでしょ?そうすると、時間の経過に比例するというよりも、ある一定の時間が経過するごとに、得点を獲得することができるの。」
ふむふむ、バカな俺でも、今のところ、話しについていけている。
「計算問題は、もっと面白い結果が出たわ。まず、絶対に避けては通れない納税義務の判定は置いておいて、次に区分経理をするでしょ?課税売上とか、非課税売上とか、仕入れとかに分けていくんだけど、これも理論のベタ書きと同じで、時間に比例して獲得する得点が増えていくのよ。でもね、区分経理以降のところ、例えば、個別対応方式とか、一括比例配分方式とか、差引税額とか。そこは、電卓を叩かないと解答できないところでしょ?電卓叩くにも時間がかかるし、計算式を組んだりしなきゃいけないから、得点効率という意味では、時間経過に対して、著しく獲得できる得点が少なくなるのよ。言ってることわかる?」
正直、だんだんついていけなくなってきた。
「要はね、得点を最大化するには、得点効率の良いところから点数を拾っていけば良いの。理論と計算を比べると、理論って、たまに難しくて良くわからない問題も出るじゃない。でも、計算って、わからなくってもえいやっ!ってするしかないから、わからなくてもペンを止めなくて良いの。つまりね、一番リスク少なく得点効率を上げる順番は、『①計算の個別・一括の前まで→②理論のベタ書き→③理論の事例→④計算の個別・一括以降』だと、私は思う。事例と計算の最後の方は、難易度で時間調整もできるしね。」
最後の方は、良く理解できてない部分もあるが、結論は計算からやった方が良いってことか。俺も計算からやる方法にしよう。
「沙希、俺も計算からやることにする!」
「うん、ちょっと試してみてねっ。」
毎日のLINE電話で話すのは、なにも勉強の話題だけではない。
「なんか勉強のストレスと発散する良い方法ないかな?」
「う~ん、私はケーキとか、甘いものを食べちゃうかな~」
「俺なんてさ、最近自宅で勉強することが多いから、勉強に生き詰まると、ついつい抜いちゃうんだよね。なんか習慣みたいになっちゃって。一度そのモードになっちゃったら、戻れないから、その時間がもったいないなって。」
「あら。そうなのね。でも、私もたま~にしてるよ。」
なんと!沙希も自分ですることがあるんだ。まぁ、女の子はオープンにしてないだけで、意外と一人でしてる子多いって聞くしな。
「そっか、今度送って!俺、それ見てするから!」
「別に良いけど。でも、次回ね~。」
「ドエロいやつお願いね~!」
変態トークにも花が咲く。沙希も根っからのエロだ。こういう話にも全然ついて来れるし、むしろ、俺の上をいくかもしれない。


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