[template id=”2105″]
「やっぱり涼介がね、この前、あっくんと華がホテルに行ったって言ってきたよ。」
「そっか、それで、誤解は解けた感じ?」
「うん、涼介には、私たちが付き合ってるって言っちゃったけど、納得はしてくれたよ~!最初来た時は、カンカンで、華と篤が俺に隠れてヤりまくってるって行ってたけど。笑 そんなわけないのにね~」
「そうだよ、そんなわけないよね。そういえばさ、この前、すごい事があって!」
俺は沙希にこの前のことを話す。
「そんなこと言ってる涼介だけど、この前、俺が予備校の帰りに歩いてたら、璃子ちゃんと2人でいるところを見ちゃって。それで、あとについていったら、カラオケに入ってね。それで、どうなったと思う?部屋で立ちバックしてた。」
沙希はさぞかしビックリするだろう。こういう話しには免疫がありそうだけど。
「実は、私もね、涼介から、その話を聞いたの。涼介はかなり酔ってたみたいで、あんまりその日のことを覚えてないんだって。それでね、璃子ちゃんにそのことで弱みを握られて、協力しなかったら、華にバラすって言われてるんだってさ。」
俺は全身に寒気がした。なんて恐ろしい。女の裏の顔ほど怖いものはない。
「協力って?何に協力するの?」
「それがね、私もビックリしたんだけど、璃子ちゃん、涼介じゃなくって、あっくんに気があるらしくて、付き合えるように協力してほしいって言ってたんだって!」
「そんな・・・。なんで涼介とヤったんだろう?弱みを握るため?最初からそのつもりだったのかな。怖いね!」
「だから、あっくんも、気をつけてね。大丈夫だって、私は信じてるけど。」
「俺は大丈夫だよ。どんなハニートラップが来たって、引っかからない自信がある。だって、沙希がいるもん。」
「ありがとね。早く会いたいね。一緒にいたい。来週末まで待てないよ。」
沙希の声は、急に寂しそうになった。
「なかなかお見舞いに行けなくって、本当にごめんね。」
仕方がないこととはわかっているが、この気持ちのやり場が見当たらない。神埼璃子。近づいてきたら跳ね返してやる。来れるもんなら、来てみろ。
――次の講義の日。
久しぶりに涼介と話した。
「この前は、ごめんな。」
「ううん、誤解が解けたみたいで良かったよ。それでさ、ちょっと。」
俺は、涼介を教室の外に連れ出し、受付の前で話した。
「この前、見ちゃったんだよ。あと、沙希からも聞いた。璃子ちゃんにハメられて、ヤっちゃんたんでしょ。」
「そうなんだよ。華にバレたら大変だから、どうしようかと思って。それと、もう一つ謝らなきゃいけないことが・・・。」
涼介は、少し言葉を発するのを渋った。
「璃子ちゃんに、篤と沙希のことをしゃべっちゃった。執拗に沙希のことを聞いてくるから、逃れられなくって。」
「そっか、まぁ良いよ。お互いに、璃子ちゃんには気を付けよう。」
俺と涼介は、仲直りをした。むしろ絆が強まった気がする。
「あと、そういえば、華が、今度の水曜日に、自宅で鍋パーティしないかって。おっ、華、おはよう!」
ちょうど華が受付の前を横切った。
「おはよう!」
華はいつもとなんら変わりない。裏で何が起こっているのか、知る由もないだろう。
「今ね、今度の水曜の鍋パーティの話してた。」
涼介は華に言った。
「そうなんだ、久しぶりにみんなでワイワイやりたいから、篤も、ぜひ来て!人数多い方が楽しいし!」
「それ、私も行きたい!」
華の背後から声がした。なんという図ったようなタイミング。璃子ちゃんだ。俺と涼介の表情がこわ張る。
「璃子、おはよう!良いよ。大勢の方が楽しいしね。二人とも良いよねっ?」
華は、俺の涼介に念のため確認する。その横で、璃子ちゃんが鋭い目つきで、涼介を見た。
「あぁ、もちろん。」
涼介は、脅されたように言った。こうして、次の水曜日に、華の自宅で、鍋パーティの開催が決定した。何も起こらないと良いのだが。
――水曜日。
俺と涼介は緊張していた。事前に個別でLINEでもやりとりをし、対策を立てていた。
「おはよう、篤!今日は何とか乗り切ろうな!」
「うん、頑張ろう!璃子ちゃんは何をしでかすかわからないから、注意して監視してよう。まぁ、俺らが変なことしない限り、何もないと思うけどね。ってか、華の家に行くの初めてだから、ちょっと楽しみだな。」
「華の家、けっこう広いよ!」
涼介は行ったことあるのか。そりゃそうだ、付き合ってるんだもんな。
「そうだ、なるべく俺と璃子ちゃんは早めに切り上げるから、そのあとは楽しんで!笑」
「ありがとう、最近俺らも、ヤってないしな!じゃぁ、またあとで。」
「おじゃましま~す!」
俺と涼介は、駅で待ち合わせして、一緒に華の家に来た。リビングに入ると、既に来ていた璃子ちゃんと華が、鍋の準備をしていた。華の家は確かに広い。間取りはうちみたいな1Kで、リビング部分がすごく広い。十五畳くらいあるだろうか。奥にはベッドがあり、それを仕切るように本棚っぽいやつがおいてある。リビングの手前は、ダイニングスペースで、四角いコタツみたいなテーブルに、ローソファがある。四人でそのコタツを囲み、鍋の準備をした。
「今、コンビニで二リットルペットのお茶と、少しお酒買ってきたよ!」
「涼介と篤、ありがとう!」
華はニコニコしながら応えた。この鍋パーティが終わるまで、その笑顔を持続してほしいものだ。
「じゃじゃーん!私は、梅酒の差し入れです!」
璃子ちゃんも得意げに持参した梅酒を取り出した。ちょっと高そうな梅酒だ。俺は、日本酒とかは苦手だが、強いお酒の中では、唯一梅酒は飲める。というか、お酒の中でも好きな部類に入る。どんな味がするか楽しみだ。
「璃子も、ありがとね!」
「ううん、これ私のお気に入りの梅酒なの!美味しいから、みんなも後で飲んでね!そういえば、沙希さんは、今日は来ないの?『金時会』のメンバーだよね?」
沙希が入院していることを知らない璃子ちゃんは、俺らに聞いた。特に俺の方を見ながら、何やらニヤニヤしている。とても不気味だ。涼介も璃子ちゃんから目線を逸らした。
[template id=”1994″]
[template id=”1613″]