第04話 『アプローチ』


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――翌一月上旬。

年が明け、いよいよ年明けクラスの開講も明日に迫っている。忘れていた頃に、あのLINEグループにメッセージが来た。
「あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」
華からだ。それに続いて続々とメッセージがトークライン上に漂った。
「今年もよろしく!」
「こちらこそ、よろしくね。」
みんな元気そうだ。年末は勉強していたのだろうか。俺は受験生だというのに、ほとんど勉強していない。既に出遅れているかもしれない。とりあえず、俺もそのトークの輪に加わった。
「明日からまた再開だね。みんな年末は何してた?」
「私は理論を強化してたよ!」
「俺は計算が苦手だから基本問題を解きなおしてた!」
沙希だけは何やら違った。
「私は、ちょっと事情があってほとんど勉強できなかったけど、また明日からエンジン全開頑張ります!」
もしかして、カウントダウンで彼氏と旅行でもしてたのかな。俺はいるかどうかもわからない彼氏に嫉妬した。でも、また明日みんなに会えることが楽しみで、胸を躍らせた。
「みなさん、おはようございます!年末は有意義に過ごせましたか?上手くいった方も、上手くいかなかった方も、今日からまた仕切りなおしです。直前期に向けて良いスタートダッシュができるように、一緒に頑張って行きましょう。」
塚原先生は、張った声で俺らに呼びかけた。俺は闘志にメラメラと火がついた。考えてみたら、俺は合格発表後とか、年明けとか、直前期とか、こういう区切りがあるたびに闘志を燃やしては、フェードアウトしていっている。でも今回はきっと違う。受験仲間がいるのだから。講義の後は、みんなでこの前のカフェに来た。
「久しぶりだよね。みんな元気にしてた?」
「講義の休みが長すぎて、上手く勉強のペースをつかめなかったよ~。」
涼介はすかさず華の隣に座ったので、身体を開くようにして、二人で話している。なんとなく二人の距離がちょっと縮まってる気がする。俺の気のせいだろうか。
「沙希は、年末は旅行とか行ってたの?」
俺は沙希に気になっていたことを聞いてみた。
「そうね、ちょっと家族で遠出をしてたの。」
「家族でかぁ。家族仲良くて良いね!俺なんて、一人暮らしを始めてから、全然実家に帰ってないな。」
沙希の表情は、どことなく曇っていたような気がした。
「じゃぁ、あらためて、新年あけましておめでとうということで、乾杯しますか!」
涼介が音頭を取った。
「カンパ~イ!」
年明けから最高に楽しい。税理士試験生活がこんなものになるとは、誰が想像していただろうか。浮かれた気分で、俺は沙希とこれまでの受験生活について、話を膨らませた。沙希は、初年に『簿記』『財表』をダブル合格し、翌年に『所得税』、三年目に『国税徴収法』に合格したらしい。そして今年は四年目だ。スゴすぎる。何より受けた科目全てに一発で合格している。容姿端麗で、頭も良い。畏れ多い存在だ。
「ちょっと今日は体調が良くないから、私、先に帰るね。」
沙希はそういうと、ゆっくりと席を立った。
「マジか、大丈夫?」
「どこか悪いの?お大事にね。」
みんな沙希を心配した。
「うん、ちょっと貧血気味みたい。帰って少し横になれば大丈夫。」
「駅まで送って行こうか?」
「ありがとう、大丈夫。せっかく久しぶりに集まったんだから、みんなもう少しゆっくりしてね。」
そういうと沙希はカフェの出入口の扉を開けた。お互いに手を振り、沙希を見送った。視線を涼介と華の方へ戻す。今日も華は安定のおっぱいだ。まだ1月だというのに、胸元は常にオープンだ。手を伸ばせばすぐにその弾力を感じることができるだろう。その欲望と理性の狭間で、俺の心は揺れている。
「じゃぁそろそろ出ようか。」
「今日はどうする?」
「今日はもう帰らなきゃ。」
俺はちょっと家の掃除をしたかったので、そのまま帰ることにした。
「私は、もう少し自習室にいる~。」
「俺も今日は帰ろうかな。」
華を予備校に残して、俺と涼介は駅へと向かった。
「気のせいかもしれないけど、なんか二人の距離縮まってない?」
俺は冗談半分で、涼介に聞いてみた。
「そうそう、去年あの後、個人的にLINEしててね。結構やりとりしたんだけど、なかなかガードが固くてね~。でもとりあえず、今は彼氏はいないみたい!」
この男、手が早い。抜け目ない。俺も涼介を見習って、沙希にアプローチ開始といきますか。こっちの方でも、俺の闘志に火がついた。
「勉強お疲れ様。今日はあの後、無事に家に帰れた?少し体調良くなってたら良いけど。」
俺はグループLINEじゃなく、個別に沙希のLINEに送った。涼介だって華と個別にLINEしてるんだ。別に俺が沙希と二人でLINEをしていても何も悪くないだろう。そもそも涼介は華を狙てる。そういえば、涼介はどれくらい親しくなったのだろうか。もう二人でどこかに出かける仲だろうか。あくまで妄想だが、少し羨ましい気持ちになった。
「俺も涼介に負けてられないな。」
気持ちはそうでも、まだ一向に沙希とのトークは既読にならない。まだならない。こういう時間は、ドキドキして、とても長く感じる。これは恋だろうか。きっと恋だろう。とりあえず、俺は晩飯を食べることにした。
「何も入ってないな。」
冷蔵庫の中を見て、思わず声が漏れる。去年の春に彼女と別れて以来、ろくに自炊をしていない。そのため、ほとんど食べ物が冷蔵庫に入っていないのだ。コンビニで買って帰ってくるか、ほどんど外で済ませてきてしまう。ひとり暮らしには、地味に痛い出費だ。こんなときに彼女でもいてくれたらいいのに。もし沙希が料理でもしに来てくれたら、これほど幸せなことはない。俺の妄想は萎むことはなかった。
「買いに行くか・・・。」
俺は諦めて、近くのコンビニまで弁当を買いに行くことにした。家の近くには、割と大きな公園がある。そしてしばらく歩くと、大きな赤い鉄橋が架かる川が流れていて、その川は県境になっている。まだ一月なので、この時間は既に真っ暗だ。もう少し暖かければ、学校帰りの高校生カップルが河原の堤防の陰で、シャツやスカートに手を入れてイチャイチャしていることもある。近くの公園は、噂では青姦のスポットらしい。さすがにこんなに寒い時期は誰もいないだろうが、ついつい草むらなどに人影がないか、視線を集中させてしまう。

コンビニから帰ってきて、買ってきた弁当を食べ、ホッと一息ついた。テレビには、最近よく見るタレントが出ている。ちょっと璃子ちゃんに似ているような気がする。その時、俺のスマホが鳴った。
「返事、遅くなってごめん。ずっと横になってて。でも、おかげさまで、少しは良くなったみたい。」
良かった。内心、俺はすごく心配していた。
「そっか、大変だったね。まだあんまり無理しないで。熱とかはあるの?」
「少し微熱があるみたい。たぶん風邪を引いちゃったのかな。まだダルいけど、でも、きっと明日明後日には治ると思う。」
「そっかぁ、沙希って、一人暮らしだっけ?食事の準備とか大丈夫?」
送った後に気付いたが、別に下心があったわけではない。純粋に手伝ってあげたいと思った。
「ううん、私は一人暮らしだよ。でも、まだ食欲も出てもないから大丈夫。」
一人暮らしか。今まで、何人の男がその家に上がったのだろうか。と、良くわからないことを考えてみる。
「そうだ、もし来週の講義休むようなら、俺が板書とかプリントとかもらって渡すね!」
「ありがとう、助かるわ。講義までになんとか体調整えなくっちゃ。」
そうLINEが来た後に、大きいスタンプも送られてきた。白いクマみたいなやつが、グーサインをしていて、ハートがいっぱいついてるやつだ。
「おおぉ!」
俺はテンションが上がった。単純な男だ。ハートが送られてきたので、テンションが上がった。俺の沙希への思いは募るばかりだった。まだ会って間もないのに。まだ、お互いを良く知らないのに。それでも、沙希のことが好きになっていた。一目惚れというやつか。とにかく沙希との距離を縮めたかった。前のめりな思いを堰き止めるように、俺は平静を装って返信した。
「うん!早く良くなると良いね!今日はゆっくり休んでね。」
そう送ると沙希から最後にスタンプが送られてきた。
「おやすみなさい。」
可愛い。今夜も良い気分で寝られそうだ。俺はそっとスマホをベッドに置いた。いつもは寝る前に一発抜くが、この時ばかりは、その余韻にずっと浸っていたいと思った。
「・・・。」
気づけはもう夢の中だ。


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