【インスタントフィクション】予防接種

目次
● インスタントフィクションとは?
ピース又吉さん扮する『髑髏万博先生』が考案する、カジュアルな文章のことです。


各々が『様々な解釈をして楽しむ』ための文章です。
よろしければ、お楽しみください!
『予防接種』
いざそうなった時のために、私は行くことを決意した。
緊張と期待が入り混じる1回目の予防接種。受付で熱を測る。
身体はすでに火照っていたが、幸い熱はない。
悩んだ末、人気のある方を指名した。ちなみに『モデルナ』ではない。
手際よく通された前室には、すでに先約が数名いた。
「山田さん、こちらへどうぞ。」
整然と区切られたスペースへ案内される。
「初めてですか?」
その問いに頷いたこと以外は、緊張であまり覚えていない。
なにせ初めてなのだから。
・・・位置をよく、確認して、ゆっくりと、さしていく。
「なぁんだ、なんてことはない。」
そんなところに行くなんて野蛮だという人もいるけれど、
来て良かったと思っている。
その後は、適当に時間が過ぎるのを待つ。
「2回目もお待ちしています。」
帰り道。雑居ビルを背に、私は劣等感という名の鎧を脱いだ。
「ここに来ることはないだろう。」
もう、初めてではないのだから。